筑前黒田武士の江戸日記

~隔月で第1土曜日に更新~

vol.68 太宰府で恋を

「太宰府で恋を」。東京の地下鉄駅構内で、ドキッとしてしまうようなキャッチコピーが目に入った。東京メトロ・西鉄・ANAの合同企画「きんしゃい福岡×おいでよ 東京 スタンプラリー」のスタンプ台そばに掲示された太宰府観光協会のポスター。右半分は太宰府…

vol.67 マラソン侍

平成最後となる今年の箱根駅伝は、東海大が初の総合優勝。それほど興味がある方ではないが、お正月にテレビをつけると毎年やっているので、新年を感じさせてくれる風物詩の感がある。今年は「サムライマラソン」という映画が公開予定。ストーリー自体はフィ…

vol.66 荒木村重

日曜の大河ドラマが最近の楽しみになっている。お昼の方の「軍師官兵衛」(再放送)である。キャスティング、ストーリー展開、音楽、なかなか秀作ではないかと、改めて思う。見ていて、ふと自分の間違いに気付いた。過去のブログで、コメントをいただいた方…

vol.65 高鍋の秋月藩

夏休みに秋月藩の城下町を訪れた。と言っても秋月黒田藩ではなく、宮崎県の高鍋秋月藩。2万7千石を領した秋月家のお膝元である。日豊本線の高鍋駅から歩くこと40分。石垣の残る高鍋城址には高鍋町歴史総合資料館があって、職員の方がマンツーマンで館内を…

vol.64 剣術

少年の頃にやっていた剣道を再開。今更ながら初段をとった。黒田武士たるもの剣術に精を出さねば、というつもりでもないが、なかなか良い運動になる。10年続けているフットサルではだいぶ年長者となった私も、平均年齢が高めの道場ではなんと若手扱い。熟練…

vol.63 勤王と佐幕

春分の日に休暇を合わせての二連休で福岡へ。「明治維新150年太宰府幕末展」を開催中の太宰府天満宮を訪れた。この日は「対決!幕末討論会」なる企画があり、幕末の福岡藩内で対立した勤王・佐幕の両派について、有識者がそれぞれの立場に分かれて公開討論。…

vol.62 時代劇三昧

今年の正月、「田原坂」の再放送があった。30年前、里見浩太郎さんが主役の西郷隆盛を演じた年末時代劇スペシャル。前編後編合わせて5時間半の大作ながら、食い入るように見入った少年時代の年の瀬を思い出す。激動の幕末明治を描いたストーリーの迫力もさ…

vol.61 三奈木黒田家庭園

【所在地】福岡県朝倉市三奈木 【関連サイト】 http://www.city.asakura.lg.jp/www/contents/1297742934071/index.html 九州豪雨から昨日で半年。新聞では「復興誓う」との見出しで朝倉市の様子が伝えられていた。倒壊した建物など被害の爪あとを残す現地の…

vol.60 ブログ満5年

かつての武士たちの回顧談を収録した『幕末の武家』(柴田宵曲編)を読んでいたら、語り手に見覚えのある名が出てきた。江原素六。4年前に、ブログで書いていることを思い出した(「vol.07 船橋戊辰戦争遺跡」)。戊辰戦争で官軍福岡藩の小室弥四郎に組み伏…

vol.59 同族

島崎藤村の『夜明け前』に、主人公の青山半蔵が同族の青山寿平次と横須賀の公郷村を訪ね、三浦一族の末裔という山上家の歓待を受けるくだりがある。成り行きは、寿平次が営む妻籠の本陣に泊まった山上を名乗る客が、自分の家と同じ家紋に気付いて青山家の出…

vol.58 幻の天守閣

東京国立博物館のミュージアムシアター「熊本城」を見てきた。CGで再現された熊本城をナビゲーターの女性がツアーガイドのように案内してくれる。大きなスクリーンに展開される映像はかなりリアルで、人の目線で画像も動いていくので、実際に城内を歩いて進…

vol.57 朝倉の黒田武士

九州豪雨から1ヶ月。大きな被害を受けた朝倉市は、かつての秋月藩領、三奈木黒田家領であり、黒田武士ゆかりの地。秋月の武家屋敷や、三奈木黒田家の庭園の状況は気になるところであるが、比良松の遠戚も被災しており、まずは困難に直面されている方たちの…

vol.56 肥後と筑前

細川家の幕末維新史料集として知られる『肥後藩国事史料』が、国立国会図書館のホームページ(「デジタルコレクション」)で閲覧できるようになっていた。昭和初年刊行の古い本なので、近所の大学図書館で読むときは扱いに気を遣ったものだが、自宅のパソコ…

vol.55 無人島長平

仕事帰り、図書館の古文書講座に通いはじめた。先月の教材に登場したのが「無人島長平」。なんと江戸時代に実在した日本版ロビンソン・クルーソーだ。嵐で船が壊れ、流されるままに命からがら辿り着いたのは、本州から500キロも離れた絶海の孤島(鳥島)。12…

vol.54 遠州の黒田屋敷

先日、静岡県菊川市の旧家を訪ねた。屋敷のあるじは黒田氏。と言っても、旗本領の代官である。当地の豪農とあって、重厚な長屋門を構え、周囲に堀を巡らした立派なお屋敷だが、もとは清和源氏の流れをくむとされる武家の家筋。家紋は藤巴なので、筑前の黒田…

vol.53 武士飯

NHKのBSプレミアム「幕末グルメ ブシメシ!」。単身赴任の江戸勤番藩士にスポットを当てたところが、時代劇としては何か新鮮で毎週見ていたが、先日、原作漫画(『勤番グルメ ブシメシ!』)も買って読んでみた。勤番侍の日常や食生活が知れて興味深いストー…

vol.52 矢野六太夫

昨年の福岡旅行の折に見つけた「五龍日記」がなかなか興味深い。著者は福岡藩の儒者であった柴田風山(但し諸説あり)。藩政批判をして流罪となった人物である。6年ほど前に宮若市古文書勉強会の方たちが翻刻されていたのだが、福岡市総合図書館の郷土特別…

vol.51 これぞまことの黒田武士

私の祖父は晩年、家系について熱心に調べていたが、親戚筋と情報交換していた当時の書簡などを整理していたところ、母里太兵衛友信の末裔との関係を示す記述を見つけた。養子だった高祖父の実家の姉が、当代母里太兵衛の後妻になっていたようである。我が家…

vol.50 金子堅太郎

ブログをはじめて5度目の新年を迎えた。今年も三箇日を過ぎたら4日から仕事。短いパターンの正月休みは終わってしまったが、かつての黒田武士は、どのような正月を過ごしていたのだろうか。『金子堅太郎自叙伝』(日本大学精神文化研究所研究叢書)で、明…

vol.49 平尾山荘

【所在地】福岡市中央区平尾5-2-28 【関連サイト】 http://bunkazai.city.fukuoka.lg.jp/cultural_properties/detail/item_id:101547 https://dayori.city.fukuoka.lg.jp/43160 久しぶりに福岡へ。今年は野村望東尼の150年忌にあたる年。まず望東尼が晩年…

vol.48 中老

仕事帰りの電車の中で、隣の人が読んでいる小説が何気なく視界に入ったのだが、「福岡藩」「中老」という記述に思わず目を見張った。福岡藩の中老と言えば、6千人規模の黒田家臣団のなかで大老に次ぐ最上層の家格。表紙が見えないので、本の題名がわからな…

vol.47 飯尾甚太夫

前回の豊州紀行の折り、富来城跡近くの「富来茶屋」というお店で昼食をとった。古民家の風情あるお座敷でいただいた定食は、お手頃な価格ながら多彩な盛り付けで、なかなか美味しい。テーブルには郷土史を紹介する手書きの資料が置いてあったが、その中に、…

vol.46 豊州紀行

夏休み、豊前・豊後の史跡を散策してきた。成田から大分までジェットスターで1時間45分。空港近くの国東市サイクリングターミナルで自転車を借りて、5キロほど離れた富来城跡まで、海沿いの自転車専用道でサイクリングを楽しみ、国東にて1泊。翌日は、杵…

vol.45 飯田丸

熊本地震から3ヵ月。被災した熊本城の飯田丸五階櫓で、先日ようやく補強工事が開始された。崩れず残った1本の石垣に支えられるその姿は、いささか痛ましい。大天守・小天守の周りで、宇土櫓とともに天守規模の櫓がそびえる様は、熊本城ならではの見応えあ…

vol.44 三匹、筑前に現る

新聞のテレビ欄に昔懐かしい「三匹が斬る!」(再放送)。高橋英樹、役所広司、春風亭小朝が演じる浪人3人が、諸国を旅しながら悪党を退治する時代劇だ。続々編の初回スペシャル版ということで、早めに帰宅して見てみたのだが、舞台は思いもかけず福岡藩。…

vol.43 殿、利息でござる

映画「殿、利息でござる!」を見てきた。コメディ路線かと思いきや、意外に真面目なヒューマンドラマだ。重税を課す藩に対し、有志が一致団結して金を出し合い、藩に貸し付けて利息で取り返し、領民に分配するという実話に基づくストーリー。消費増税は延期…

vol.42 栗山大膳

先週の日経新聞「文学周遊」(土曜夕刊に連載)は、森鴎外の短編小説「栗山大膳」。主君黒田忠之を諌めるために幕府に訴えるという究極の手段に出た栗山大膳について、「時に苦言を呈しながらも、善政に導く理想的な部下を描いているように思える」としたう…

vol.41 真田丸

大河ドラマで脚光を浴びている真田家。黒田家と何かご縁はあろうかと、『黒田家譜』の索引で「真田」を探してみると、文化5年(1808)の記述に興味を引く名前を見つけた。朝鮮通信使の応接のため対馬に派遣された幕臣の記載のなかに、「寺社奉行支配調役 真…

vol.40 町奉行

休みの日の夕方、ふとテレビをつけると風間杜夫主演「銭形平次」の再放送。これは懐かしい。少年時代に見ていた時代劇のひとつで、主題歌も気に入っていた。最近ではすっかり減ってしまったが、人情味あふれる時代劇はいいなと改めて思いながら、見ていた頃…

vol.39 太政官札贋造事件

日本銀行の広報誌『にちぎん』(No.44 2015年冬号)に、太政官札贋造事件の記述を見つけた。「お金の源―素材の歴史と作り方」と題したコーナーで少し触れられている程度ではあるが、意外なところに福岡藩の名を見つけると、何か嬉しくなる。 福岡藩が廃藩に…