筑前黒田武士の江戸日記

~隔月で第1土曜日に更新~

vol.13 湯島聖堂

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所在地】東京都文京区湯島1-4-25
【関連サイト】http://www.seido.or.jp/ 

 

 青く光る大成殿。この幻想的な光景は、千代田区のイベント(「はしまつり」)で期間限定のライトアップが行われたもの。元禄3年(1690)に林大学頭(林鳳岡)の私塾として当地に開設された湯島聖堂は、後には昌平坂学問所として官立の学校となり、各藩の藩士の入学も認められていたそうだ。

 『新訂黒田家譜』(第5巻)に、文化8年(1811)2月の釈奠(せきてん)の折り、福岡藩黒田斉清が「自ら聖堂に詣で、大成殿を拝し、太刀馬代銀三枚を献じ給ふ」旨の記述を見つけた。関東大震災による焼失後、斉清の訪問時と同じ姿に再建されたのが現在の大成殿。当時17歳の若い殿様が訪れた日の様子が目に浮かぶ。

 家譜の同年の項には、林大学頭(林述斎)が領内を通行の際(対馬での朝鮮通信使応接のため)、道案内を担当した高浜次太夫が「狂病を発し下人を斬り殺し、別にまた手負せて自殺」という事件も記録されていた。騒動の陳謝のために駆けつけた福岡藩の使者竹中半助に対し、大学頭は「思いよらざる厚意にて遠路を遣われしを謝し」、「次太夫が罪とならざる様にせらるべし」との気遣い。人を思い遣る儒教の「仁」の精神といったところだろうか。下人は気の毒だが。

(2013年10月訪問)

 

f:id:kan-emon1575:20131201140116j:plain日中の風景。ライトアップ時とはまた雰囲気が違う。(以下2013年12月撮影)

 

f:id:kan-emon1575:20131201134448j:plain屋根の上にはシャチホコに似た神魚「鬼犾頭(きぎんとう)」。さらにその下には、霊獣「鬼龍子(きりゅうし)」が、聖堂を守るべく睨みをきかせている。