筑前黒田武士の江戸日記

~隔月で第1土曜日に更新~

vol.43 殿、利息でござる

 映画「殿、利息でござる!」を見てきた。コメディ路線かと思いきや、意外に真面目なヒューマンドラマだ。重税を課す藩に対し、有志が一致団結して金を出し合い、藩に貸し付けて利息で取り返し、領民に分配するという実話に基づくストーリー。消費増税は延期、国の借金(国債)はマイナス金利と、現代では真逆の事態が起こっているところであるが。

 税金は必ずしもネガティブに捉えられるべきものではないと思うが、使途が厳正に管理されるべきであることは言うまでもない。福岡藩はどうであったろうか。『筑紫史談』には、「各役所以下に関する費額は各主任の役所より御用聞に差出す。御用聞に於て其當費緩急を議し増減を加え凡て之を監査し、裏判を経て家老元締に差出し認可を乞ふ。認可の後、之を勘定所に廻す」、「勘定所所轄に金奉行・蔵奉行あり、金米の支出を司る。勘定奉行の指令に対し、其米金を出納す」(第21集「旧福岡藩制度一般」)とある。

 請求から支払まで様々な役職の人が関与しており、ある程度は牽制が機能していたようにも見えるが、「支出は凡て御用聞に於て監査す」(同前)、「御用聞は俗に塩味噌奉行と称せらる。財政の事、其の手を経ざるものなし」(第22集「旧福岡藩事績談話会記事」)ともあり、御用聞の存在は大きかったようだ。ちなみに「御用聞は大組より出れど馬廻よりも出づ。馬廻より出る最上級の役は御用聞なり」(同前)との由。

 映画は、個人の損得を抜きにして、公益のために尽くした人たちの物語であったが、福岡藩は税の使い道について私心のない公正な判断ができていたであろうか。我が家の先祖も、そのプロセスの一端を担った時期があったようなので、実態を調べてみたいところである。