筑前黒田武士の江戸日記

~隔月で第1土曜日に更新~

vol.93 熊本再訪

 

 昨年は熊本を再訪。4度目かと思うが十数年ぶり。平成28年(2016)の熊本地震以降では初めてである。前年にようやく天守閣が復旧して公開がはじまった熊本城。本丸まで直結する特別見学通路がなかなか斬新だった。我が藩の飯田家とも縁のある飯田丸あたりから全長350メートル。高さ6メートルで続く長大な歩道橋は、天守へのアクセスが非常に楽な一方、地上とは一味違う眺めにも新鮮味がある。景観としてどうかというところもあるが、上り下りがなくバリアフリーという点では来訪者への幅広い配慮とも言える。

 天守閣内部も昭和の復元天守とは趣が異なり、令和ならではの新時代型の博物館の感があって、見応えも十分だ。エレベーターも装備。個人的には木造で旧来通りの天守が好きだが、エレベーターで最上階を目指すお年寄りたちを見ていたら、歴史好き目線だけではなく、いろいろな人のメリットを考えることも大事かなと思えてきた。いまだ城のいたるところに被災の爪痕を残し、折しも城全体の完全復旧は当初計画より15年遅れて2052年になるとの発表もあって、まだまだ道半ばであるが、30年後を楽しみに待ちたい。

 ところで、初めて熊本を訪れたのは中学1年の夏休み。今は亡き祖父と2人で九州を旅した時だった。神奈川育ちの自分には生まれて初めての大旅行。しかも既に歴史好きであったので、九州各地の城跡を巡る1週間の旅は毎日が高揚感に満ちていたことを今も思い出す。そして熊本の後に最後の目的地となったのが福岡。福岡城址にも初めて連れて行ってもらった。思い出深いあの頃と変わらない城址の風景も悪くはないが、熊本城のように名城としての存在感が出てくるとよい気もする。整備計画はどんな状況だろうか。本丸御殿の復元、実現すると嬉しいのだけれど。



高さ6メートルの特別見学通路から天守を望む。壊れた石垣や建物外壁が痛ましい。

 

宇土櫓も復旧整備中。櫓でさえ天守並みの熊本城。細川54万石にふさわしい迫力だ。

 

藩主一門(1万石)の細川刑部邸。熊本地震以降は公開中止のままで、状態が気になっていたが、そばの駐車場から覗くことができた。建物は無事な様子で安堵。

 

少し足を延ばして八代へ。熊本藩筆頭家老の松井家(公称は長岡姓)が在城した八代城は天守台(写真正面)を含む石垣と堀が残る。一藩士ながらもさすがは3万石という貫禄。