筑前黒田武士の江戸日記

~隔月で第1土曜日に更新~

vol.98 津

このブログで初めての1字タイトル。藤堂家27万石の城下町である津に初めて行ってみた。津藩は我が藩の黒田長知公のご実家である。最後の藩主藤堂高潔は黒田長知の2歳上の兄。お二人とも能好きで、維新後はともに能楽師の活躍を積極的に支援。高潔は自身も…

vol.97 全国藩校サミット

昨年11月、東京の文京区で行われた全国藩校サミット文京大会に行ってきた。藩校のあった全国各地で毎年開催地を変え実施されているイベント。8年前には修猷館を擁する我が藩にも出番が回ってきたことがあるが(福岡大会)、今回は江戸幕府の学問所である湯…

vol.96 川路左衛門尉

9月に佐渡に行ってきた。かつて佐渡奉行の統治のもと、金銀の採掘で栄えたところである。往時さながらに復元された佐渡奉行所を見学。私の祖父の母方は佐渡の出で、武家ではないが苗字帯刀を許され奉行所にも出入りしていたというから関心は尚更だが、建物…

vol.95 金子伯爵の葉山別邸

【所在地】神奈川県三浦郡葉山町一色2311【関連サイト】 https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/588620 https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/541161 https://zushi-hayama.keizai.biz/headline/359/ 帰省の折り、金子堅太郎の別邸を訪ねてみた。実…

vol.94 団琢磨

ふと思い立って、東京日本橋の三井本館へ。このあたりは仕事で度々来た時期があり、よく知っているつもりだったが、当時は団琢磨の殉難地であることに気付かずにいた。三越の裏口を出ると、正面にいくつも並ぶ堂々たる円柱が目を引く古めかしい建物。福岡藩…

vol.93 熊本再訪

昨年は熊本を再訪。4度目かと思うが十数年ぶり。平成28年(2016)の熊本地震以降では初めてである。前年にようやく天守閣が復旧して公開がはじまった熊本城。本丸まで直結する特別見学通路がなかなか斬新だった。我が藩の飯田家とも縁のある飯田丸あたりか…

vol.92 第二の黒田騒動

前回話題にした福岡市博物館の史料群の中には、他にも興味を引くものがあった。藤井勘兵衛徳毅(後に勘右衛門)が自身の事を書き残した「私行記」(藤井家資料No.87)。黒田光之の側近だった藤井勘右衛門高任の嫡男で、光之逝去後に隠居した父の跡を継いだ人…

vol.91 矢野市太夫

矢野市太夫徳雄について書いたことがあった(vol.06)。元文2年(1737)、福岡藩中老3,200石の矢野家を継いだ人物である。その長男が我が家の養子になっているのだが、なぜ長男が矢野家の跡取りとならずに養子に出されたのか、そもそも矢野家の歴代当主が通…

vol.90 最後の仇討

テレビでもよくやっているような「ぶらり散歩」よろしく、都内唯一の路面電車である都電荒川線で荒川方面へ。住宅地のようなところを走っていると、ひときわ目立つ立派な建物が見えてきた。何だろうかとスマホで調べてみると、吉村昭記念文学館。吉村昭さん…

vol.89 会津藩老 萱野権兵衛

十数年ぶりに会津若松へ行ってきた。コロナ第7波の急拡大はやはり気になったので、目的を絞って日帰りで短時間。観光スポットである会津武家屋敷で西郷頼母の屋敷などの見学に留めたが、帰り際には鶴ヶ城の雄姿も拝むことができた。少年時代に見た日テレの…

vol.88 無足頭

無足とは何ぞや。ふと思って調べてみると、「武士でありながら、領地を与えられていないこと、知行地を持たないこと」を意味するらしい。なるほど、それで知行取ではない福岡藩の無足組はそういうネーミングなのかと、今さらではあるが妙に腑に落ちた。歴史…

vol.87 桜田と一橋

図書館に並ぶ本の中に、「一橋徳川家文書」というサブタイトルが目についた。この『茨城県立歴史館史料叢書』の一冊を見て、一橋から黒田に養子入りした殿様が頭に浮かんだのだが、本を開いてみるとビンゴ。一橋徳川家初代当主徳川宗尹の記録史料である「覚…

vol.86 因州鳥取

緊急事態宣言が解除された昨年の秋、山陰を旅行して初めて鳥取を訪れた。鳥取藩因州池田家32万石の城下町。過去のブログ(vol.70 備前岡山)でも触れた岡山藩備前池田家は池田輝政の長男筋で(武鑑にも「嫡流」とある)、因州池田は言わば分家筋となるが、家…

vol.85 青春はつづく

大河ドラマ「青天を衝け」がついに完結。なかなか良いドラマだった。ブログでも取り上げた『徳川慶喜公伝』や昔夢会の話も出てきて、キャスティングこそなかったものの、慶喜や栄一たちの脇で藤井甚太郎らの編纂員と思しき姿も再現されていて感慨深かった。…

vol.84 浦安の藩邸遺構

【所在地】千葉県浦安市堀江4-14-2 【関連サイト】http://www.dairenji.jp/guide/ 福岡藩に関係するキーワードでネット検索する情報収集をたまにやっているが、最近の新発見が大蓮寺。東京ディズニーランドのある浦安市のこのお寺に、なんと福岡藩江戸屋敷…

vol.83 侯爵邸

緊急事態宣言継続も博物館の制限が緩和された6月、営業再開となった江戸東京たてもの園に行ってきた。予約制で入園者数を絞っており、広い園内で密になることはなく、ゆったりとタイムワープしたような散策を楽しめた。見どころは満載だが、見入ったものの…

vol.82 昔夢会

徳川慶喜を特集していたNHKの歴史番組「歴史探偵」(「謎の将軍 徳川慶喜」)を見ていたら、なんと年明けのブログ(vol.79 青天を衝け)でも取り上げた『昔夢会筆記』が、「徳川慶喜のインタビュー集」として紹介された。しかも画面に映し出された原刻本は、…

vol.81 天真寺

【所在地】東京都港区南麻布3-1-15 2回目の緊急事態宣言が解除され、利用再開となった都立中央図書館に向かう途中で、南麻布の天真寺へ。前回の祥雲寺と同様、江戸での黒田家の菩提寺として武鑑にも記載のあるお寺だが、ホームページは開設されていないよ…

vol.80 祥雲寺

【所在地】東京都渋谷区広尾5-1-21 【関連サイト】https://shouunji.or.jp/ 気分転換に近くで少しの外出をと、白羽の矢を立てたのが祥雲寺。黒田忠之が父長政を弔うため溜池の中屋敷に立てた寺を起源とする、江戸での黒田家の菩提寺だ。武鑑で目にするので…

vol.79 青天を衝け

通勤経路上にある東京商工会議所のロビーに、次作の大河ドラマ「青天を衝け」を紹介するコーナーが出現。初代会頭が渋沢栄一ということで、さっそく盛り上がっているようだ。渋沢栄一と徳川慶喜の物語をパラレルに展開させるというストーリー設定には興味を…

vol.78 麒麟がくる

日曜の晩は「半沢直樹」に気を取られ、しばらく大河ドラマをサボっていたが、先日久しぶりに見てみたら、嬉しいことがあった。三好討伐後の評定の場、将軍足利義昭の前で、「池田城主池田勝正と、伊丹城主伊丹親興は、最後まで我らに刃向こうたのじゃ」と声…

vol.77 杖立騒動

海音寺潮五郎さんの小説『豪傑組』を読んでいたら、重要な場面で思いもかけず福岡藩士が登場。肥後杖立の温泉宿での柳川藩士と佐賀藩士のトラブル。「さわぎに、同宿していた筑前黒田家の大目付役をつとめている梶原喜太夫という人物が聞きかねて出て来て仲…

vol.76 黒田小学校

年明けの福岡旅行では、県立図書館の郷土資料室にも立ち寄り、収穫もあった。大組の伊丹家の系図に目を通していたところ、佐幕派の重役だった久野一致(一角、将監)の名を見つけた。彼は伊丹家に生まれ、養子である義兄の伊丹景陽(下記ご参照)が家を継い…

vol.75 福岡城下で暮らす

年明けに福岡へ行ってきた。福岡市博物館の企画展示「福岡城下で暮らす」にも寄ってみたのだが、展示されていた「筑前名所図会」を見て、ふと気付いたことがあった。「浄念寺・円応寺」と題した風景画、よく見ると、福岡城下ノ橋付近の武家屋敷も描かれてい…

vol.74 加賀百万石

昨年秋、北陸新幹線開通後はじめて金沢を再訪。成巽閣を訪ねると「侯爵前田家の夫人展」なる企画展示が行われていた。ふと黒田家から前田家に嫁いだ女性がいたことを思い出し、展示品の中にその女性の写真を発見。前田利建侯爵夫人となった前田政子さん。鳥…

vol.73 霞ヶ関の江戸屋敷

少し前に江戸東京博物館の特別展「サムライー天下泰平を支えた人びとー」を見に行ってきたのだが、入り口近くに案内標識のごとく立てられた大きな古写真を目にして、思わず歓喜。なんと霞ヶ関の福岡藩江戸屋敷だ(上部写真)。歴史本などでもよく見る一枚だ…

vol.72 筑前維新史紀行

4年前のブログ(「vol.37 藩物語」)で、立花増熊の古写真が別人と取り違えられてはいないかという疑問を呈したが、興味を持たれブログにコメントを寄せていただいた方が、この件に関して『福岡地方史研究』第57号で論文を発表され、1冊送ってくださった。…

vol.71 黒崎城

【所在地】福岡県北九州市八幡西区屋敷1-9 【関連サイト】 https://www.city.kitakyushu.lg.jp/yahatanishi/file_0026.html 夏休みの福岡旅行で、最初に訪れたのが黒崎城址。黒田家の筑前入封後、黒田二十四騎の一人である井上九郎右衛門之房が城代となっ…

vol.70 備前岡山

10連休となった今年のGWは、史跡巡りの旅で岡山を訪れたが、天保6年(1835)、私の五代前の先祖も使者として岡山藩を訪ねたことがあったらしい。黒田家と池田家は姻戚の関係もあるが、当時の岡山藩主池田斉敏は島津家出身で(島津斉彬の実弟)、同じく島津…

vol.69 英国艦隊の福岡来訪

丸善の日本史コーナーで、『秘蔵古写真 幕末』という新刊が目に入った。日本カメラ博物館所蔵の古写真から、幕末の人物を中心に収録したという写真集。しばらく立ち読みしていたら、なんと黒田長溥・長知父子が並んで椅子に座っている写真が出てきた。慶応2…